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司法書士・行政書士 よどがわ事務所
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相続に関する用語解説

◆遺留分

 遺留分とは、兄弟姉妹を除く相続人が亡くなられた方の財産に対して持っている一定の割合の権利を
いいます。
 被相続人(亡くなる方)は、本来自己の財産の処分は自由になすことができるはずですが、相続財産は
相続人の生活保障等の意味合いも持つことから一定の範囲内で相続財産の処分を制限しようとするのが
遺留分の制度趣旨となります。
 具体的には、夫のAさんが不仲な妻のBさんを無視して愛人Cさんに全財産をあげると遺言書を書いていても、
妻のBさんはCさんに対し、侵害された遺留分に相当する金銭の支払を請求することができます。
これを遺留分侵害額請求といいます。
 尚、法律上遺留分権利者として認められているのは、配偶者、子及びその代襲者、直系尊属となります。
 兄弟姉妹が相続人の場合には遺留分が認められておりませんので、ご注意ください。

※令和元年7月1日より前に開始した相続については、改正前の遺留分減殺請求の制度が適用されます。
 この制度では、原則として金銭の支払を請求するのではなく、遺留分を侵害する範囲で、贈与や遺贈の
対象となった財産そのものの権利を取り戻すことになります。
 例えば、相続人が妻Bさんと子Dさんの2人で、夫Aさんが愛人Cさんに唯一の財産である土地の
全部を遺贈していた場合、妻Bさんの遺留分は全体の4分の1となります。
 この場合、妻Bさんが遺留分減殺請求をすると、原則として、その土地の4分の1の持分を取得し、
Cさんと土地を共有することになります。
 ただし、旧制度でも、財産を受け取った側がその価額を弁償することによって、財産そのものの
返還を免れることができる場合があります。



◆相続関係説明図について

 相続関係説明図とは相続登記をする際に相続関係をわかりやすくするために添付する書類です。
 これによって戸籍等の書類の原本還付を容易に受けることができることになります。
 相続関係説明図自体は簡単な相続関係であれば一般の方でも作ることは可能だと思いますが、
相続が何世代にもわたるなど複雑化している場合には作成が難しい場合もあり得ます。
 弊所でも相続関係説明図も含めて相続登記のご相談を承っておりますので、お気軽にご相談ください。
  
  お問い合わせ電話番号 06−6326−4970


相続関係説明図の例

被相続人 淀川太郎 の相続関係説明図

最後の住所   大阪市東淀川区瑞光1−3−12明徳ビル205号
最後の本籍   大阪市東淀川区1丁目3番12号
登記簿上の住所 大阪市東淀川区瑞光1−3−12明徳ビル205号

(被相続人)淀川太郎
     ‖   昭和5年1月1日出生
     ‖   平成21年1月1日死亡
     ‖
     ‖
     ‖
     ‖        
     ‖_______   淀川 次郎
     ‖          出生 昭和35年1月1日
     ‖          住所 大阪市東淀川区瑞光1−3−12
     ‖             (分割)
     ‖ 
     ‖ 
     ‖ 
   相続人 淀川花子
   出生  昭和5年1月1日
   住所  大阪市東淀川区瑞光1−3−12


◆法定相続情報一覧図

法定相続情報一覧図とは、被相続人とその法定相続人の関係を一覧にした図で、戸籍等の必要書類とともに
法務局に申し出ることにより、登記官の認証文付きの写しの交付を受けることができます。
この写しは、相続登記や預貯金の相続手続などに利用することができ、法務局での交付手数料は無料です。
複数の金融機関などで相続手続をする場合には、戸籍謄本等の束を何度も提出する負担を軽減することが可能です。
相続関係説明図とは異なり、戸籍等に基づく相続関係について登記官の確認を受けるものですが、
遺産分割の結果や相続放棄の有無を証明するものではありません。


◆改製原戸籍

 改製原戸籍とは、国の事情で戸籍の様式などが変わった際に新しい戸籍と入れ替えに使われなくなった
古い戸籍のことをいいます。
 最近の改製原戸籍でいえば、コンピュータ化に伴って生じた古い戸籍が考えられます。
 改製原戸籍から新戸籍へ書き換える際には書き換えの際に現に生きている戸籍のみを移転させるため
例えば、書き換え時に死亡している者の名前などは新戸籍には記載されません。
 そのため、新戸籍への書き換え時に死亡していたり、結婚したりして戸籍から抜けていた人を調べるため
には改製原戸籍を取得する必要が生じます。

参考:
戸籍の書き換え時に子Cが婚姻して戸籍から抜けていた場合(新戸籍では子Cの記載がありません。)

�@平成9年1月1日の旧戸籍
旧戸籍の記載 父A、母B、子C、子D
↓
�A平成10年1月1日
子Cが婚姻により旧戸籍から抜ける。
↓
�B平成11年1月1日コンピュータ化により新戸籍を作成
新戸籍の記載 父A、母B、子D


◆寄与分

寄与分とは、相続人のうち亡くなった方の生前の財産の維持や増加について特別の
貢献があった者について遺産分割の際にその貢献度を考慮する制度です。

要するに、相続人の中で亡くなった方の世話や面倒を見てた人と亡くなった方の生前なんの協力もなく、
突然相続になって現れた相続人の相続分が同じだと不公平な場合もあるので調整しようという制度です。

尚、寄与分が認められるのは相続人に限られますので、内縁の妻や夫、その他相続人
以外で亡くなった方を世話をした方には認められておりません。
相続人以外の方については、寄与分とは別に、後記の特別寄与料が認められる場合があります。
また、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として寄与分を考慮しない取扱いとなります。
詳しくは、後記の「具体的相続分と10年経過後の遺産分割」をご参照ください。

参考:
(寄与分)
第九百四条の二  共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2  前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3  寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4  第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。


◆特別寄与料

特別寄与料とは、相続人ではない被相続人の親族が、無償で療養看護その他の労務を提供し、被相続人の財産の
維持又は増加について特別の貢献をした場合に、相続人に対して請求できる金銭のことです。
請求できるのは、被相続人の親族(6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族)に限られます。
例えば、子の配偶者は対象となり得ますが、内縁の妻や夫、友人・知人などは、介護や世話をしていても、
この制度による請求はできません。
また、寄与分が相続人の貢献を考慮する制度であるのに対し、特別寄与料は相続人以外の親族の
貢献を対象とする制度です。
相続人のほか、相続放棄をした者、相続欠格者及び廃除によって相続権を失った者も対象から除かれます。
例えば、子の配偶者が被相続人の介護をしていた場合などに認められることがあります。
ただし、介護や世話をしていたというだけで、当然に特別寄与料が認められるわけではありません。
無償の療養看護などによって、介護費用の支出を免れたなど、被相続人の財産の維持又は増加について
特別の貢献があったと認められる必要があります。
特別寄与料が認められるかどうかや、その金額は、介護等の内容・期間・程度などの個別の事情によって
異なります。また、その貢献を裏付ける資料が乏しい場合などには、認められないことや、
期待した金額が認められないこともありますので注意が必要です。
将来の請求を考えている場合には、介護日誌や介護サービスの利用状況など、貢献の内容を
確認できる資料を残しておくことが大切だといえます。
当事者間の話合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に調停又は審判を申し立てることができます。
ただし、相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき又は相続開始から1年を経過したときは、
申立てをすることができなくなりますので注意が必要です。
なお、この制度は、令和元年7月1日以後に開始した相続について適用されます。


◆戸籍の附票

戸籍の附票とは住民票と同様に記載された方の住所の証明となるものです。
この戸籍の附票を取得する意義は住所の変遷の履歴が住民票の場合と比べて証明しやすい点にあります。
例えば、何度も引っ越しを繰り返している方の住民票による住所証明の場合、住民票の記載で分かるのは、
現住所・前住所・転出先住所の最大3つまでです。
ですので、前々住所を調べたい場合には別途前住所の住民票の除票を取得する必要があります。
これに対して、戸籍の附票には、その戸籍に在籍している間の住所の履歴が記録されるため、
複数の住所のつながりを1通で証明できる場合があります。
ただし、本籍地を変えていなくても、戸籍の改製などにより附票が分かれている場合があります。
その場合には、現在の戸籍の附票だけでは住所の変遷を証明できず、改製原附票や戸籍の附票の
除票なども取得する必要があります。


◆戸籍全部事項証明書・戸籍個人事項証明書

戸籍全部事項証明書・戸籍個人事項証明書とは、従来の戸籍謄本と戸籍抄本の別名のことです。
コンピュータ化に伴って従来の戸籍謄本と戸籍抄本の呼び名を変えただけですので、戸籍謄本を
取得する必要がある場合は、戸籍全部事項証明書を取得すればよいことになります。


◆住民票の除票

  住民票のある市町村で引っ越しや死亡などの理由により転出届や死亡届が提出された場合には、住民登録が抹消されます。
その住民登録が抹消されたことを証明する者を住民票の除票といいます。
 住民票の除票は相続の際の被相続人の死亡時の住所や亡くなったことなどを証明する証明書として用いることができます。
 保存期間は、令和元年6月20日から従来の5年間から150年間に延長されています。
 ただし、改正前の保存期間を経過して既に廃棄されているものについては、取得できない場合があります。


◆除籍謄本

  除籍謄本とは、戸籍に記載されていた者全員が結婚や死亡などの理由で戸籍から抜け出た場合にできる
戸籍をいいます。
  ですので、例えば、戸籍の筆頭者の父が死亡しても母が生存して戸籍に残っていれば除籍謄本とはなりません。
  除籍謄本となるのはあくまで戸籍に記載している者全員が戸籍から抜ける場合となります。


◆推定相続人の廃除

推定相続人の廃除とは、遺留分を有する相続人に
�@被相続人に対して虐待をしたり、
�A被相続人に対する重大な侮辱を加えたり、
�B推定相続人にその他の著しい非行があったり
などの相続させたくない一定の問題がある場合に、
被相続人の意思によって家庭裁判所に請求して相続権を奪う制度です。

具体的な例でいえば、息子の暴力などの虐待にあっている父親が、家庭裁判所に息子の
廃除を請求するような場合をいいます。
また、生前に請求するほか、遺言で廃除の意思を表示する方法もあります。
ただし、遺言書に廃除の意思を記載するだけで、当然に相続権が失われるわけではありません。
遺言による場合には、遺言執行者が家庭裁判所に廃除を請求し、廃除が認められる必要があります。
なお、廃除された者に子などがいる場合には、その子などが代襲相続人となることがあります。
尚、推定相続人が兄弟姉妹の場合は、廃除はできませんが、遺留分がありませんので、
1円も相続させたくなければ、遺言書で他の誰かにあげると記載すればいいことなります。

(推定相続人の廃除)
民法第892条  遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、
被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行が
あったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

(遺言による推定相続人の廃除)
民法第893条  被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が
効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。
この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

(推定相続人の廃除の取消し)
民法第894条  被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2  前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。


◆数次相続

数次相続とは、被相続人が亡くなって遺産分割の協議をする前に相続人が
亡くなってしまうような場合をいいます。

代襲相続との違いは、相続人が相続の前か後に亡くなるかの点です。

数次相続が通常の相続と違ってややこしい点は相続が二回以上重なってしまうため
相続関係が複雑になるという点です。

例えば、父A、母B、子C、子Dがいた場合に、父Aが死亡すると、
法律上、その時点で相続人は母B、子C、子Dとなります。

しかしながら、この状態で遺産分割協議をせずに子Cが死亡した場合、
子Cの相続が開始しますので、仮に子Cに妻Eと子Fがいた場合、
父Aの遺産分割協議をするには子Cの相続人である妻Eと子Fまでもが
参加する必要がでてきます。

こういったように相続が発生した際に遺産分割をせずに長期間放置していると
相続人の数がどんどん拡大してきますので、相続が発生したら早い段階で
遺産分割協議を行うのが重要だといえます。

ちなみに、数次相続により相続人の数がどの程度の期間で増加するのかの
例をあげますと30年超放置していただけで相続人が100人を超えてしまった
という事例もあるようです。


◆代襲相続

 代襲相続とは、被相続人が死亡するよりも先に相続人が死亡などしている場合に、その相続人の子供が
相続人に代わって遺産を相続することをいいます。
 要は、相続発生時に相続権を持つべき方が死亡していた場合に、その子供が変わってその権利を承継する
ことを代襲相続といいます。
 例えば、具体的な例として以下のような家族があると想定します。

父:淀川太郎 母:淀川花子 子:淀川次郎

 この場合、父の淀川太郎さんが死亡すると相続人は母の淀川花子さんと子の淀川次郎さんとなります。
 しかしながら、父の淀川太郎さんが亡くなった時点ですでに子の淀川次郎さんが死亡していた場合には、
子の淀川次郎さんは相続人となることができません。
 このような場合に、子の淀川次郎さんに子の淀川三郎さんがいれば、淀川太郎さんから見れば孫にあたる
淀川三郎さんが淀川次郎さんに変わって相続人となることを代襲相続といいます。

尚、たまに親が相続放棄をした場合にもその子が代襲相続人となるかというご質問をされる方もいらっしゃいますが、
相続放棄の場合は法律上、代襲相続の原因とされておりませんので、ご注意ください。

参考条文抜粋(民法)
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条  被相続人の子は、相続人となる。
2  被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、
その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。
ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3  前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、
その代襲相続権を失った場合について準用する。


◆特別受益

特別受益とは、簡単にいえば、共同相続人の中に亡くなった方(被相続人)から、
遺贈や贈与を受けた場合に、そのまま残りの遺産を法定相続分に従って
分割してしまうと相続人間で不公平がおきることから、利益を得た範囲分だけ
相続分を減らすという制度です。
具体的に特別受益にあたるものの例としては以下のものがあります。

�@遺贈を受けた場合
 遺言によって特定の財産を譲り渡された場合です。
�A生前に婚姻若しくは養子縁組のための贈与を受けていた場合
 持参金や支度金など婚姻や縁組のために被相続人から贈与されたような場合です。
�B生計の資本として贈与を受けた場合
 子供が独立する際に居住用の宅地などの不動産を贈与した場合などをいいます。

尚、個々の贈与が特別受益にあたるかどうかは、亡くなられた方(被相続人)の
資産収入、社会的地位及び生活状況や支出目的などを考慮の上で遺産の前渡し
にあたるようなものといえるかどうかを判断する必要があります。
また、特別受益や寄与分の主張が認められた場合には、相続開始時の遺産額をもとに
個々の相続分を決定するため、遺産分割時と相続開始時の期間があいている場合には、
ややこしい手続が必要となります。
ですので、特別受益を主張される場合は、あらかじめこの点も考慮しておく必要があります。

※相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として特別受益を考慮しない取扱いとなっています。
詳しくは、後記の「具体的相続分と10年経過後の遺産分割」をご参照ください。


◆特別受益の持ち戻し・持ち戻しの免除

共同相続人の中に、被相続人から生前に贈与を受けるなどの利益を受けていた者がいる場合に相続人間の
不公平をなくすためにその贈与の価額を相続財産に加算して、遺産分割を行う場合があります。

これを特別受益の持ち戻しといい、特別受益者の相続分を決定するにあたっては
以下のような計算方法が用いられます。

「(相続開始時の遺産価格+贈与の価格)×相続分−贈与の価格=特別受益者の相続分」

例えば、相続人が妻A、子B、子Cの3名の場合で、被相続人の遺産が2億円4千万円、子Cが
生前に事業の開業資金として4000万円の贈与を被相続人から受けていた場合に
上記計算式を適用すると以下のような形となります。

(2億4千万円+4千万)×4分の1―4千万=3000万円(子Cの相続分)

子Cの法律上の相続分は4分の1なので本来であれば2億4千万円の4分の1である
6千万円を相続できるところが特別受益を考慮すると3千万円しか相続できなく
なるわけです。

このように特別受益の持ち戻しを認めると特別受益者の相続分が減少するわけですが、こういった事態は
必ずしも亡くなられた被相続人の希望に沿わない場合があります。

こういった場合に、あらかじめ被相続人が遺言で特別受益の持ち戻しの免除の意思を表示していれば、
子Cも法定相続分通りの6千万円を相続することができるわけです。

こういった場合に、被相続人が特別受益の持ち戻しを免除する意思を表示していれば、
子Cも法定相続分通りの6千万円を相続することができるわけです。
また、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用の建物又はその敷地について遺贈又は贈与
がされた場合には、特別受益の持ち戻しを免除する意思表示があったものと推定されます。
この場合、原則として、その不動産の価額を特別受益として持ち戻さずに、残りの遺産を
分割することになります。
ただし、持ち戻しの免除によって、他の相続人からの遺留分侵害額請求まで
当然に免れるわけではありませんので注意が必要です。

(特別受益者の相続分)
民法第903条  共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは
生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の
価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中
からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2  遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、
受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又は
その敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を
適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

◆具体的相続分と10年経過後の遺産分割

具体的相続分とは、法定相続分又は遺言で指定された相続分をもとに、特別受益や寄与分などを
考慮して算定する各相続人の相続分のことです。
令和5年4月1日施行の改正民法により、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、
原則として特別受益や寄与分を考慮せず、法定相続分又は遺言で指定された相続分に
従って分割することになりました。
ただし、10年を経過する前に家庭裁判所へ遺産分割の調停又は審判を申し立てた場合などには、
例外があります。
また、10年経過後でも、相続人全員が合意すれば、特別受益や寄与分を考慮した遺産分割を
することは可能です。
この取扱いは、令和5年4月1日より前に開始した相続にも適用されます。
ただし、経過措置があり、相続開始から10年が経過する時と令和10年3月31日のいずれか遅い時までは、
家庭裁判所への申立てによって、特別受益や寄与分を考慮した遺産分割を求めることができます。
なお、10年を経過すると遺産分割自体ができなくなるという意味ではありません。
あくまで遺産分割をそのまま放置すると寄与分や特別受益の主張できなくなり、それを主張されたい方に
とって不利になる場合があるといういうことです。

(期間経過後の遺産の分割における相続分)
民法第904条の3 前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。
ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することが
できないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に
、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

(遺産の分割に関する経過措置)
民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第3条(抜粋)
新民法第九百四条の三及び第九百八条第二項から第五項までの規定は、施行日前に相続が開始した
遺産の分割についても、適用する。
この場合において、新民法第九百四条の三第一号中「相続開始の時から十年を経過する前」とあるのは
「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第二十四号)の
施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時まで」と(中略)する。
※上記の施行日は令和5年4月1日であり、この経過措置により、相続開始から10年が経過する時と
令和10年3月31日のいずれか遅い時までに家庭裁判所へ遺産分割の請求をした場合には、
特別受益や寄与分を考慮した遺産分割を求めることができます。
令和10年3月31日という日付は、附則の「施行の時から五年」に対応するものです。


◆法定相続人・法定相続分

法定相続人とは、民法で定められた法律上相続人となる者のことをいい、法定相続分とは
民法で定められた遺産相続の割合をいいます。
以下は基本的な相続人と相続割合です。
子が先に死亡していても、その子である孫などが代襲相続人となる場合には、直系尊属や
兄弟姉妹は相続人となりません。
また、父母が死亡していても祖父母などの直系尊属がいる場合には、兄弟姉妹より先に相続人となります。
直系尊属が複数いる場合には、被相続人に親等の近い者が優先します。

亡くなった方に子供がいる場合の相続人と相続割合
�@子供と配偶者がいる場合:子供(2分の1)、配偶者(2分の1)
�A子供のみの場合:子供が100%財産を取得

亡くなった方に子供がいない場合の相続人と相続割合
�@配偶者と親がいる場合:配偶者(3分の2)、親(3分の1)
�A親がいない場合:配偶者(4分の3)、兄弟姉妹(4分の1)
�B配偶者がいない場合:親が100%取得
�C配偶者と親がいない場合:兄弟姉妹が100%取得
�D親と兄弟姉妹がいない場合:配偶者が100%取得

(子及びその代襲者等の相続権)
民法第887条  被相続人の子は、相続人となる。

(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
民法第889条  次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者が
ない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一  被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二  被相続人の兄弟姉妹

(配偶者の相続権)
民法第890条  被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条
又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

(法定相続分)
民法第900条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。
ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、(※)父母の一方のみを同じくする
兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

※平成25年12月5日民法の一部を改正する法律が成立(同月11日公布・施行)したため、
嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同じになりました。
これは最高裁判所が平成25年9月4日に民法の「嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする」部分に
ついて遅くとも平成13年7月当時において、法の下の平等を定める憲法14条1項に違反であったとの決定をしたためです。
尚、今回の取扱いの変更の適用がある期間の相続であっても遺産の分割の協議や裁判が終了しているなど
最高裁判所の「確定的なものとなった法律関係」に当たる場合には、その効力は覆らないとされています。


◆配偶者居住権

配偶者居住権とは、被相続人の所有する建物に居住していた配偶者が、一定の要件のもとで、
相続開始後もその建物に無償で住み続けることができる権利です。
遺産分割や遺贈などによって取得し、存続期間は原則として配偶者が亡くなるまでですが、
別の期間を定めることも可能です。
例えば、配偶者が配偶者居住権を取得し、子が建物の所有権を取得するという分け方が考えられます。
配偶者が建物の所有権そのものを取得する場合に比べ、預貯金などの他の財産も取得しやすくなる
ことがあります。
ただし、被相続人が配偶者以外の者と建物を共有していた場合など、配偶者居住権を取得できない場合も
あります。
また、第三者に対して権利を主張するためには、配偶者居住権の登記が必要です。 な
お、配偶者居住権は他人に譲り渡すことができず、配偶者が亡くなったときは消滅するため、
その相続人に相続されるものではありません。

(配偶者居住権)
民法第1028条第1項ただし書
ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。


◆相続登記

相続登記とは、亡くなった方が所有していた土地や建物について、相続により取得した方へ名義を
変更する登記のことです。
令和6年4月1日から申請が義務化され、自己のために相続が開始したこと及びその不動産の所有権を
取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
また、遺産分割により不動産を取得した場合には、原則として遺産分割の日から3年以内に、
その内容に応じた登記をする必要があります。
正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象となります。
令和6年4月1日より前に開始した相続も対象となり、同日より前に相続による取得を知っていた不動産については、
原則として令和9年3月31日までに対応する必要があります。
◆相続人申告登記

相続人申告登記とは、自分が登記簿上の所有者の相続人であることなどを法務局に申し出ることで、
相続登記の基本的な申請義務を履行できる制度です。
遺産分割の話合いがまとまらない場合などにも、相続人が単独で申し出ることができ、登録免許税はかかりません。
ただし、不動産の所有権や持分を確定する登記ではありません。
不動産を売却する場合や抵当権を設定する場合には、別途相続登記が必要です。
また、遺産分割が成立した後に、その内容に応じた登記をする義務については、
相続人申告登記で代えることはできません。
相続人申告登記は、自分が亡くなった所有者の相続人であることなどを申し出る制度であり、
誰がその不動産を取得したのかを登記するものではありません。
そのため、遺産分割が成立して不動産を取得する方が決まった場合には、
その方が所有者となったことを登記に反映させるため、遺産分割の日から3年以内に、
その内容に応じた相続登記を申請する必要があります。
この遺産分割後の登記義務は、相続人申告登記では履行できません。
例えば、妻と子が相続人申告登記をした後、遺産分割によって妻が不動産を単独で取得した場合には、
別途、妻名義への相続登記が必要となります。
なお、相続人申告登記は一人が自分の分だけ申し出ても、他の相続人の申請義務まで
履行したことにはなりませんので注意が必要です。
他の相続人の分も含めて申し出る場合には、その方からの委任などが必要です。
◆所有不動産記録証明書

所有不動産記録証明書とは、特定の方が所有権の登記名義人となっている不動産を、氏名・住所などの
検索条件に基づいて一覧にした証明書です。
令和8年2月2日から制度が開始された制度で、 相続人が被相続人名義の不動産を調べる際などに
利用することができ、相続登記の漏れを防ぐために役立ちます。
ただし、氏名・住所などを検索条件とするため、登記簿上の記載や指定した検索条件によっては、
所有している不動産が検索結果に含まれない場合があります。
異体字など一定の表記の違いにも対応した検索が行われますが、すべての表記の違いに対応するものではありません。
また、所有権の登記がされていない不動産は検索対象とならず、この証明書だけですべての
所有不動産を把握できるとは限りませんので注意が必要です。
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